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広瀬 一郎氏
2008/08/15
スポーツ界の未来を変える!
スポーツ総合研究所 所長、多摩大学大学院 教授
広瀬一郎さん

@公共財としてこれからのスポーツの意義とは?

 私の立場としては1999年にスポーツのソーシャルパフォーマンスについてスポーツ産業学会に投稿しており、それに基づいて話させてもらうと、ソーシャルパフォーマンスとは社会的機能という意味で、この言葉はアメリカの赤十字社が社会貢献事業を始めるときに使われ始めました。当時は世間でsocial responsibility(社会的な責任)があるでしょうということが企業などに叫ばれるようになっていました。

 例えば、プレゼンシャルプログラムというものがあって、これはマクドナルドが100億円くらい出したと思うのですが、ワシントンで1998年くらいに元大統領ジミー・カーターらが何をはじめたかというとストリートチルドレンになっている子どもたちへの教育を推進しようというものでした。
 なぜ、それを始めたかというとストリートチルドレンが増加するとマクドナルドの売上が減少してしまうからです。つまり、企業の社会的な責任という部分ではなく、そのような問題が健全化しないと経済も良くならないということです。これは、皆が一緒の方向を向いている一種の社会的な投資行為なのです。

 これがソーシャルパフォーマンス。そう考えると、私は21世紀の日本社会におけるソーシャルパフォーマンスを考えるとスポーツということを一旦離れて、何が社会問題になるかというと少子高齢化社会から来る若年層の労働力の低下、そして、GDPが低下する。そうすると、製造業への依存から脱却しなければならない。これはアメリカを見るとよくわかる。その状況は日本にもやってくる。そうなったときに日本は第3次産業をどうやって生産性を高めるのかということを考えなければならない。

それをスポーツで解決できますかっていうことを置き換えればいい。私はそれを私は現在、5つの課題について大きな機能を果たせるのではないかと考えています。1.モラル 2.ライフ 3.コミュニティー 4.コスト 5.グローバルです。
まず1つ目は教育。現在、世間では色々言われています。例えば、日本の子どもたちの数学力が3位から20何位に落ち、どうすればいいかということを盛んに言われている。
しかし、それは問題の設定が違っています。まずは教育とは何かということです。数学力が落ちている、それは何で問題なのか。そもそも何で数学が必要なのかということを教えないで、数学のテクニカルな部分を教えても意味がないのです。
それがこのスクールでも言っている「HOW」から入るな「WHY」から入れということにつながってくる。
では、結局、教育の問題はどうやって解決していくとかというと、私が行っているスポーツマンシップ教育です。
これは「当事者意識を持ちなさい」や「子どもの頃から自己相対化ができる」というような重要なことをWHYから考えさせ、「だったら、これを勉強しなければならない」ということを子どもたち自身に植え付けさせるということと、もう1つは、自分は何になりたくて、それに対して自分に何が足りないかという欠落部分を感じとる能力を運動とか体育ではなく「スポーツ」をやらせることによってその能力を高めましょうということを行っています。
小学校の時点でそのような教育的効果を高めることが重要です。
 2つ目が少子高齢化。1つ大きな問題になっていくのが老人医療費の問題。その問題でキーポイントになっていくのが事後医療ではなく、事前医療というか予防医療。
予防医療というのは簡単言うと健康づくり。それに対してスポーツが貢献できないわけがない。では、本当にスポーツをすると何が予防できるのか、それに対して国がいくらの予算を使うのかをはっきりさせることが重要で、それで初めて医療費が削減できるなどということが言えます。
 3つ目が地域振興。そのことを考える中でポイントが2つあって、1つは地域のシンボルとしての機能。例えば千葉市民が「千葉」という言葉を大きな声で公然と喋れるのはジェフのスタジアムやマリーンズの球場だと思います。それを地域が共有することで地域のアイデンディティが生まれ、地域が盛り上がる効果がある。ただ、「地域振興」或いは「地域の活性化」とは何を意味するのか、曖昧なまま安易にキャッチフレーズ的に使われていると感じます。地域振興とは何かという尺度を作らなければいけないのではいないでしょう。
 そして、もう1つは、紐帯の機能を高める。これが4つ目にもなってくるのですが、コミュニティが崩壊している中で、住んでいる人がわからない、顔がわからないということがあると災害や犯罪などに困る。そこで地域の中で、スポーツをするということで、つながることにより、災害時の手助けや犯罪抑止につながる。また、ただスポーツで、地域の人と仲良くなりましたということだけでなく、災害や犯罪が起きるとどうしてもコストがかかってします。そのコストを下げるという効果も含んでいるということです。
 最後は、これまで話したこととクロスしますが、経済の問題。スポーツは経済的な側面でも一定の役割を果たす事が可能なのではないだろうかと思います。現在日本の経済が陥っている深刻な下降は、もちろん基本的にはバブルの後遺症としての不良債権が原因ではあるが、国民の心理的な側面も大きく与っていると推測されます。識者達の意見を総合すると心理的な側面も2つに大別されます。即ち「将来の不安による消費控え」がその第1。他の1つは飽食の時代となり、生活の基本的な物資を既に獲得した事と、魅力ある新商品が登場しなくなっていることに起因する消費意欲の減退。いずれにせよ消費控えが経済の循環に負のエネルギーを与えているという点であります。
それを解決できる可能性があるのが、スポーツ。W杯などの観光やメディアの異常な盛り上がりを見るとそうですが、指定管理者制度などを適用することによる雇用の拡大など新しい可能性が多くあります。

A広島のスポーツ界を将来、どのように変わっていけばいいのでしょうか。

それはわかりません。笑
これはいじわるで言っているはなく、先ほどから言っているように「当事者意識を持て」ということにつながってきます。広島の人たちが何に問題意識をもっているかは私にはわかりません。私は知識や方法は知っていますが、そこがわからないと話になりません。だからこそ、スポーツマンシップ教育が子どもの頃から必要なのです。脳医学で立証されていますが。25歳までにそのような思考能力を身につけないと頭がそのように柔軟な考え方ができなくなります。まずはやはり、市民やファンが当事者意識を持ち、WHYから入れるかということではないでしょうか。

Bこれからのスポーツのまちづくりの可能性をどのように考えていますか?

 これは2つわけて考える必要があって、1つはインフラの問題。2つ目はインタンジブルアセット(無形資産)。後者の方は明日からできますよ。実際に千葉でやりました。笑
公立の全小学校の5、6年生でスポーツマンシップ教育を1年に1回ということをやれば、予算も何にも要らないですよ。
もう今までの体育とかの教育では国も通用しないということはよくわかっている。国民体育大会も国民スポーツ大会になるでしょうし、文科省も3年前に体育局がなくなり、青少年スポーツ局になっている。これは国も変わってきている証拠。でも動きが鈍い。だからこそ、地域でやれることをやっていけばいいと思うんですよ。
 「スポーツは何なのか」や「スポーツマンシップとは何なのか」ということを自分なりに考えるという基本のところを。それを皆で話すということが重要だと思いますし、それに実は正解はない。だが、それを考え、話すということに意味があるということに気づいてほしいです。
 あとはそれをするかしないかを地域レベルで決定するだけでいいんです。というか藤本くんがやればいいのではないでしょうか。笑
 そして、インフラの問題ですが、広島でいうと広島市民球場跡地の問題がある。サンフレッチェが専用スタジアムを作りたいらしいですが、まず考えるべきは「広島市のためになるのか」または「スポーツが広島にとって必要なのか」ということです。いらないのだったら、止めればいい。スポーツのためや球団のためっていう考えをするから話がおかしくなる。この話は2番目で。広島のためになるからやりましょうというのが1番にこないといけない。
 これもHOWから入ってはいけないWHYからです。スポーツが素晴らしいかどうかではなく、スポーツを素晴らしくするかどうかなんです。
 「変化しないことで成功すると思いますか」この質問にYESだという人はなかなかいません。その根底から物事を考えていきましょう。


☆プロフィール
 1955年生まれ。東京大学法学部卒業
 電通でスポーツイベントのプロデュースやワールドカップ誘致活動に携わる。
 2000年(株)スポーツ・ナビゲーション設立
 2002年より独立行政法人経済産業研究所上席研究員
 2004年7月スポーツ総合研究所株式会社設立。代表取締役所長就任
 2005年4月 江戸川大学社会学部教授就任 
 2008年4月 多摩大学大学院教授就任