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畑野 幸博氏
2008/09/20
プロ野球界の中で、最も熱いファンを支える!
株式会社 阪神タイガース 営業部 
畑野 幸博さん

@大阪の街や人にとっての阪神タイガースの存在について、どのように感じられていますか?
 僕は元々、大阪の人間ではなく、他の地域に住んでおり、2年前くらいにこちらに来ました。そのような経緯があるので、余計感じることなのですが、「こんにちは、こんばんは、おはよう」というあいさつが「タイガースはどうだった」という言葉に変えられている。1千万人とも2千万人とも言われているタイガースファンはそういう意味で、大阪や関西の人たちにとってかなり近い存在だと思いますし、タイガースは大阪の文化になっているのだと思います。
 また、タイガースが勝った負けたということだけでなく、タイガースのちょっとした動きをファンは反応している。そういった意味でかなり生活に入り込んでいるのだと思います。

Aそういった熱いファンに対して、球団としてはどういったスタンスで接しているのですか?
 コアファンとライトファンの両立が課題です。
 例えば、甲子園球場での応援スタイル。代名詞ともなっているあの熱狂的な応援スタイルは、ある種の文化みたいなものになっており大変ありがたいものです。一方で、個人のペースでゆっくりと観戦したいというお客様もいらっしゃいます。球場は来場されたかた全員に楽しんでいただくものなので、両者のバランスを考慮していくのが今後の課題となってきます。

Bこれから、阪神タイガースはファンに対してどのような営業戦略を行っていくのか?
 私の普段の業務は、球場でのお客さんに対してのファンサービスともう1つがファンクラブ事業の2つを行っており、特に私はファンクラブ事業を中心に業務をさせていただいています。
 現在のファンクラブの会員は約15万人。この会員さんをさらに増やしていくということとサービスを収益化していくということが私のミッションです。
 タイガースととても近い存在である関西のファンは大切にしていくことはもちろんですが、全国にファンクラブをビジネスとして浸透させていきたいと考えております。「観客のマーケティングは関西中心ですが、ファン全体のマーケティングは全国さらにはアジアで」といった具合です。達成に向けては、絶妙なバランス感覚が必要ですが、前向きに取り組んでいきたいと考えております。
 そのひとつとして、現在はウェブのシステムを強化していっています。全国でデータを取れるので、データベースをしっかり構築し、それを使えるものにしていくことに、注力しているところですね。

Cこれからプロ野球界の中で、阪神タイガースはどのようなスタンスで球団経営を行っていくのか?
 スポーツビジネスは共存共栄が基本ですし、12球団が共通の目的に向かって進んでいくことが必要不可欠です。極端な言い方をすれば、ある1球団主導でプロ野球界が成り立っていた時期があったかもしれませんが、今はそうではありません。
 我々独自の課題を克服していくだけではなく、A球団が主導のものもあればB他球団主導のものもある、といった均衡のとれた12球団の構造作りも目指したいと思います。

Dそういった意味では現在、リーグ組織または球団の活動としてはパリーグの方が先進的だとは思いますが、それはどのように感じられていますか?
 これは球団職員の中でも考え方は色々あると思いますが、私の個人的な意見を述べさせていただくと、私は楽天球団の立ち上げに携わらせて頂いた経験と、個人の性分から「面白いモノ」に惹かれます。お客様から「セ・リーグは保守的で面白くないな」というお声を頂くと大変な危機感を感じています。
 そこで、新たなるサービス展開が必要なのですが、ただ単にパ・リーグのマネをするのではなく、これまでの歴史や文化を最大限にひきだし、それを「面白く(=興味を惹かれる)」伝えることこそが我々のサービスのあり方だと思っています。
「保守的」「伝統」「歴史」「文化」「古臭い」=「つまらない」とのではなく、そのような伝統が面白いという見せ方は無数に存在します。逆に言うと、必ずしも「新しい」「革新的」=「面白い」ではありません。パ・リーグとは違ったセ・リーグならではのサービスこそがお客様が真に求めているモノではないでしょうか。

E楽天(パリーグ)と阪神(セリーグ)どちらとも球団運営を経験されていますが、楽天から移られて何か違いを感じられたことはありますか?
 それはありますね。楽天時代の業務内容は、とにかく新規参入だったので、ゼロから1を創る仕事がほとんどでした。数ヶ月前までお客様ゼロだった球場にどうやって来場してもらうか、数ヶ月前まで球団がなかった土地でどうやってファンになっていただくか。それを達成するには、時には無謀と思える勢いが最も大事だったりもしたのです。
しかし、その点においては阪神は180度違いました。70年以上支えてくれているファンがすでに存在してくれており、ある種の文化のようなものまで形成して頂いている。その中での展開となると、ジャストアイディアでポンとやるということは大変危険です。長期的なビジョンで物事捉え、サービスを提供していくことが最も大事なことですし、そこに仕事の面白みも感じています。先ほど申し上げた全国展開も、多方面からじっくり考えていきたいですね。
ありがたいことに現在、年間300万人以上のお客さんに来てもらっており、キャパシティは決まっています。その300万人以上のお客さんの中で今までのやり方が好きというお客さんがけっこういます。
例えば、甲子園球場をドーム球場にするということになったら、大半のお客さんは反対すると思いますし、それがもっと細かいところもそうだと思います。わかりやすいのがチアリーディング。多分、普通のチアリーディングを最も受け入れないのが、タイガースファンであり、甲子園だと思います。
また、ロッテや楽天がやっている球場周辺のイベントなども、阪神には合わないと思います。1つは先ほど申し上げたファンの気質。もう1つはターゲット層です。楽天やロッテはファミリー層を狙っており、ウチも狙うのは当然ですが、今まで支えてくれてきた30代、40代のおっちゃん層は外すわけにはいけないということです。
そういった意味ではソフトバンクさんは上手くシフトしましたよね。昔は泥臭いおっちゃんのイメージでしたが、今は女の子1人で行ってもおしゃれに見える。しかも、現在、それが上手く共存していますよね。
タイガースはやはりおっちゃん層のイメージが強い。おっちゃん層も大切にしながらファミリーや若年層へもいかに展開していけるかが今後の課題です。
 
F中・四国地方のマーケットについてはどのように考えられていらっしゃいますか?
これはフランチャイズの関係で何とも言えないですし、どこまでやるのかということにこれからリーグや他球団との交渉になってきますが、野球の復権を共通テーマとして12球団一緒で働きかけていかなくてはならないのではないでしょうか。
 野球の面白さ、素晴らしさをどんどん伝えていきたいものです。

G広島でエントランスというスポーツ球団をサポートしているサークルがあり、活動しているのですが、これについてどう感じられますか?
 面白いですね。ぜひ、色々情報交換をしていきたいと思います。関西にもこのような団体があれば、個人的にはご一緒させていただければ思っています。
 野球界を盛り上げるには若い方々の力が必要です。私もその一員となって、一緒に考えていければ最高ですね。


☆プロフィール
1974年生まれ 福井県出身
学習院大学経済学部卒業後、音楽業界から、東北楽天イーグルスを経て、阪神タイガースに入社。営業部所属。
ファンクラブ事業を中心にタイガースファン拡大に尽力する

参考文献
小島克典 編著、『プロ野球2.0 立命館大学経営学部スポーツビジネス講義録』、2008、扶桑社新書
※畑野さんのインタビューが掲載されています