50(フィフティーズ)の落書き帖

スクラップ帖103(馬場啓一さんの「男の礼儀作法」から・・・)
スクラップ帖102(寺西レポート・・・思いつくままに)
スクラップ帖101(モルテン代表取締役社長の民秋 史也氏、【教育改革への提言9章】)と雑感・・・)
スクラップ帖100(スクープ!-エスパニョール・ユースU-17(スペイン))
スクラップ帖99(雑感と河合隼雄氏の〔個の時代に合った規範を〕から・・・A)
スクラップ帖98(雑感と河合隼雄氏の〔個の時代に合った規範を〕から・・・@)
スクラップ帖97(山田洋次監督―2005年8月11日付け中国新聞「戦後60年を語る」から・・・)
スクラップ帖96(寺西レポート・・・講演会記録ー平成6年4月30日より・・・後編)
スクラップ帖95(寺西レポート・・・講演会記録ー平成6年4月30日より・・・前編)
スクラップ帖94(田勢 康弘氏の【戦後60年 (下)】(2005.8.16ー日本経済新聞より)
スクラップ帖93(寺西レポート・・・X理論・Y理論)
スクラップ帖92(雑感・・・矢部廣重氏から・・・A)
スクラップ帖91(雑感・・・矢部廣重氏から・・・@)
スクラップ帖90(雑感・・・いかにやらせるか・・・)
スクラップ帖89(寺西レポート・・・オランダ協会のジュニア育成・・・B)
スクラップ帖88(寺西レポート・・・オランダ協会のジュニア育成・・・A)
スクラップ帖87(寺西レポート・・・オランダ協会のジュニア育成・・・@)
スクラップ帖86(師匠 寺西 忠成のこと・・・E)
スクラップ帖85(師匠 寺西 忠成のこと・・・D)
スクラップ帖84(師匠 寺西 忠成のこと・・・C)

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スクラップ帖87(寺西レポート・・・オランダ協会のジュニア育成・・・@)
2006/03/24
師匠、寺西 忠成氏の「思いつくまま =十年を顧みて=」を前回掲載した。

平成7年正月に、サッカー雑誌(書名不明)に連載された現在サンフレッチェ広島監督の小野剛氏のレポート、「長期的視野に立ったサッカー選手の育成 Hオランダ協会のジュニア育成@―成城大学 小野 剛」のコピーをお渡しした。そのコメントが翌2月1日付けで送られてきた。
会う機会ごとにこのようなやり取りが繰り返され、少しずつ私は目覚めていった。


コメントの前に、このレポートの抜粋を紹介したい。



『・・・今回はオランダのジュニア育成に関して、ユースプログラム担当ナショナルコーチのJan Derks氏に話をうかがいながら、オランダ各地での少年指導の現場を案内してもらいました。・・・


【T.I.C.】

オランダサッカー協会の年齢段階別指導指針(省略)でスキルを中心に学ぶ12歳以下と、戦術的理解が中心となる13-18歳に、大きく分かれています。ジュニアの育成のコンセプトは、以下に示すとおり【T.I.C.】という言葉に表され、とくに12歳以下の子どもたちにとっては、もっとも重要なこととされています。

T = Technische (スキル : Technique よりも Skill の意味)

I = Inzicht (視野および状況把握 : View,Insight)

C = Communicatie (連携、共同、共応 : Co-operation,Communication)

すなわち、技術とはそれ単独で身に付けるものではなく、常に広い視野での状況把握および、周囲との連携とともに身に付けられなくてはならない、という考え方です。
従来の指導というのは、まずドリルによって一つの技術を身に付け(Closed Skill)、それを実戦の状況で発揮できるようにさせていく(Open Skill)といったものでした。

ここでは「始めから実戦の中で」というのが大きな特徴です。
その点について質問すると、氏はサイドキックを例にあげて次のように答えてくれました。

「クライフとフリットのサイドキックは違うし、マラドーナはやはりマラドーナのサイドキックを持っている。大切なのは、試合で使える自分のサイドキックを身に付けることであり、彼らはストリートフットボールの中、すなわち “実戦” の中でそれらを身に付けていった。」

ゲームの中ではどうしてもボールに触れる回数に限界があると思う方もいらっしゃるでしようが、それは11対11のゲームを行うからで、次回で述べる4対4などのミニゲームを行えば、一人一人がボールに触れる回数は格段に多くなり、より実践(ママ)的な技術練習となり得るのです。

また、次のようなことも付け加えていました。

「ドリルで身に付けた技術は、その技術を見せたいために用いる傾向にあり、例えば前線にフリーな選手がいるにも関わらず、目先のディフェンダーとの勝負に固執してしまうような “局面” だけの選手を育ててしまうことになる。実戦の中で身に付けたスキルは、必要なときに必要に応じて発揮され、そのようなことは早い年代から身につけさせていくべきである。」

このあたりは同じオランダ人である、ウィール・クーバー氏に代表されるドリル中心の指導傾向からの反省からきているものです。実際の指導場面を見ていても、戦術の指導はしないことになっている12歳以下の子どもたちに関しても、「ファーストタッチの時の身体の向き」や「状況に応じたプレー」などのコーチングが多く見られ、オランダ協会の「スキル」という言葉の中には、我々が思い浮かべる以上に戦術的要素が多く入っているように感じられました。

それではドリルをまったく否定しているわけではありません。
当然、ミニゲームの中だけでは思ったことが、なかなかうまくできないことが多くでてきます。選手がそれを感じた時が、すなわち、「フォームの指導→ドリル→ゲーム」ではなく、「ゲーム→(うまくいかない)→ドリル→(うまくいかない)→フォームのアドバイス」という図式が存在しているように思いました。

これらのような概念が、オランダサッカー協会のジュニア育成にはあるようです。・・・・・・』




次回は寺西忠成氏の「オランダ協会のジュニア育成」を読んで(平成7年2月1日)を数回に分けて書いてみることにする。